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塩野義製薬が、中国最大の保険会社である中国平安保険グループとの資本業務提携を発表した。7月末までに、中国平安保険またはその子会社との間で、塩野義51%、中国平安保険49%の出資比率で合弁会社を設立。塩野義は発行済み株式の約2%に相当する自己株式を中国平安側に335億円で譲渡する。製薬企業と保険会社による異例のタッグにはどんな意味があるのか。
中国平安保険は一大金融コングロマリットだ(写真:ユニフォトプレス)
中国平安保険は中国深センに本社を置く保険会社だ。株式時価総額は1700億ドル(約19兆円)を超え、独アリアンツや仏アクサを上回って、保険会社としては世界第1位だ。馬明哲会長が1988年に起業し、保険事業を皮切りに、銀行事業、投資事業、インターネット金融などへと事業を拡大して、一大金融コングロマリットを築き上げてきた。2019年12月末時点で総資産額は126兆円に達する。
同社のここ数年の事業拡大を支えているのは、クラウドコンピューティングやブロックチェーン、生体認証、ビッグデータ、人工知能(AI)などの「テクノロジー」だ。13年ごろから、これら技術の研究開発に積極投資をする一方、金融サービス以外に、自動車サービス、不動産サービス、ヘルスケア、スマートシティの4分野に焦点を当て、各分野でテクノロジーをベースに多様なサービスを提供する体制を構築してきた。
ヘルスケア関連では、14年に医療アプリ「平安好医生」を運営する平安健康医療科技を上海市に設立。平安好医生は現在、中国で最大のオンライン診療のポータルであり、2億8000万人のユーザーが登録している。ユーザーはスマホアプリを通じて、AIや医師によるオンライン診療を受けることができ、一般用医薬品(OTC)や化粧品、ヘルスケア関連製品などを購入できる。このアプリの他に、オンラインを通じてAIや医師の診察を受けた上で、自動販売機で薬を購入できるようにした無人診療所の「ワンミニッツ・クリニック(一分鐘診所)」を中国各地に開設してもいる。
平安健康医療科技は、リアルな医療機関に対して、システムや人材・教育、共同購買、金融などのサービスを提供する事業も展開している。中国内にある6万カ所のクリニックが登録し、集客・送客、支払い管理なども含めたサービスを利用しているという。さらに、中国平安保険グループでは民間医療保険を提供したり、政府が運営する公的健康保険にシステムを提供したり、中国全土に健診センターの整備を進めたりと、ヘルスケア関連で多重のサービス提供体制を整備しつつある。
塩野義が、その中国平安保険グループとの合弁で行おうとしているのは次の3つの領域だ。①リアルワールドデータ(現実の診療情報)などのデータに基づく後発薬、一般用医薬品を含めた医薬品の開発、②AIを利用した医薬品の製造・品質管理体制の構築、③オンラインやリアルの店舗を活用した医薬品の販売・流通プラットフォームの構築──である。開発した医薬品は中国とアジアで販売していく。
言葉にすると少し分かりにくいが、要するに中国平安保険グループが有する顧客の健康・医療情報、AIなどの技術、オンライン診療などのプラットフォームを活用しながら、塩野義が有している医薬品やその候補を、中国・アジア市場に展開していこうというわけだ。塩野義が中国平安保険から得る335億円の資金は、新薬開発権の取得、製造・品質管理体制の構築、販売・流通体制の構築などに充てる計画だ。今回の提携を通じて、塩野義はIT、AIを活用した創薬のプラットフォームを、中国平安保険は創薬事業に乗り出す機会を手に入れる。
構想は恐らく医薬品事業の延長上にとどまらない。例えば、平安好医生というオンライン診療アプリに2億8000万人が登録しているのは、医療のインフラ整備が遅れた中国で新しいテクノロジーに国民が飛びついた結果であり、キャッシュレス化が急ピッチで普及したことにも通じる現象だ。つまり、中国平安保険グループは、中国の医療・ヘルスケア分野で、患者と医療機関、保険支払者向けの各種サービスを提供しながら、そこで発生する大量の情報を活用して効率的なヘルスケアシステムを追求できるポジションを築いてきた。
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March 31, 2020 at 03:13PM
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中国平安保険と提携した塩野義・手代木社長の深謀遠慮 - 日経ビジネス電子版
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