黒人男性ジョージ・フロイドさんが米ミネアポリスで白人警官に暴行され、死亡した事件をきっかけに、人種差別を巡る歴史が世界的に見直されている。その中で英国は、自国の保険会社が奴隷貿易で担った過去に向き合っている。
英国は何世紀にもわたり、世界貿易を金融面から支えてきた。貿易保険もその1つで、世界的な保険市場である英ロイズ保険組合(ロイズ・オブ・ロンドン)は18日、18━19世紀に大西洋をまたいで行われた奴隷貿易における「恥ずべき」役割について謝罪した。
15世紀から19世紀にかけ、約1700万人のアフリカの男性、女性、子供が生まれ育った場所から連れ出され、世界で最も残忍な国際取引の一つに放り込まれた。多くの人が、情け容赦ない状況の中で命を落とした。
18世紀後半までに英国は奴隷商人大国となり、1761年から、奴隷貿易が廃止される1807年の間に取り引きされたアフリカ人の約40%を運んだ。
英国以外に奴隷貿易市場で大きな存在感を示していたのはポルトガルとその植民地ブラジルで、市場の約32%を占めていた。フランスは約17%、米国やオランダの船も関与しており、その割合はそれぞれ約6%と約3%だった。
奴隷市場は、英国の海上保険でどの程度の重要性があったのか
文書として記録されている証拠は多くないが、奴隷貿易と西インド諸島貿易を合わせ、1790年代の英国海上保険の41%を占めていたと歴史家は推定している。
「18世紀の英国海上保険の3分の1から40%は奴隷貿易と、奴隷が育てた作物の輸送が占めていた」と、Centre for the Study of the Legacies of British Slave-ownershipの元所長、ニック・ドレイパー氏は説明する。「英国に運んでいた砂糖は貴重な船荷を持っていたし、船自体も高価だった。英国は長く戦争状態にあったため、しばしば敵国の海域を通過していた」
主要な保険会社は
18世紀、主要な海上保険にはロンドン・アシュアランス、ロイヤル・エクスチェンジ、ロイズ・オブ・ロンドンの3社があった。
「ロイズは保険業界を独占していた。おそらく市場の80─90%を占めていた」とドレイパー氏は語る。「奴隷貿易が廃止された1807年までに、海上保険におけるその重要性は低下しつつあったった。奴隷制が廃止された1830年代には砂糖経済の重要性も薄れていた。そのころは、例えば奴隷が育てた綿花などを大量にアメリカ南部から英国に運んでいた」
奴隷貿易における保険の役割
当時の保険市場で奴隷は積み荷とみなされ、一般的な保険料に含まれていた。
奴隷は「小包(parcel)」と呼ばれることも多く、その価格は民族、体の大きさ、身長、年齢、性別、健康状態によって決められた。引受人からは家畜と並んで「生鮮品」に分類された。反乱によって奴隷に損害が出た場合、保険会社や裁判所は、暴風雨の中で家畜がパニックを起こしたのと同様に扱った。
「保険規約の多くは、病気や反乱で死亡した奴隷を対象から外していた。対象にしていたのは、海の危険にさらされる船だった」と、ドレーパー氏は言う。「運ばれた人たちが健康な状態で目的地で下船できるかどうかは、保険の対象外だった」
[ロイター]
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