菅内閣は、不妊治療の保険適用拡大の実現に動きだした。30日締め切りの2021年度予算の概算要求に、まずは現在の治療費助成の拡充が盛り込まれる。重い治療費負担を強いられている当事者らから歓迎の声が上がる一方、情報の乏しさによる病院選びの難しさなど治療環境の改善を求める要望も強く、課題として浮かび上がる。(川田篤志)
◆口コミ頼りに病院探し
「今後、私みたいな経験をする人がいなくなればうれしい」
3年間の不妊治療を経て、7月に妊娠した神奈川県在住の女性会社員(38)は、保険適用拡大を歓迎しつつ「国が関与することで、まっとうな医療を受けられるようにしてほしい」と望む。
女性は保険外の高度な「顕微授精」を含め、総額250万円以上の治療費がかかった。同時に苦労したのが情報不足による病院選び。日本産科婦人科学会は、学術目的などで全国約600施設の治療成績を集計し、総数を公表しているが、個別の実績は開示していないため「患者の手助けになるデータはなかった」。
会員制交流サイト(SNS)への投稿など、口コミを頼りに病院を探した。初めて通った不妊治療の専門病院では、卵巣に残る推定卵子数が少なく妊娠しにくいことが判明。だが、担当医から半年間は初期治療の「タイミング法」を続けるよう促され「治療を長引かせたいだけでは」と不信感を募らせた。
結局、妊娠までに4つの病院を転院した。「例えばがんなら治療成績が良い病院を公的機関のホームページで調べられる。なぜ不妊治療ではできないのか」と憤る。時間をつくるため、勤務先では一線の部署から異動させてもらうなど、仕事との両立にも悩んだ。8月に母が病気で他界し「あと1年早ければ、赤ちゃんを母に見せられたのに」と涙ぐむ。
◆ミスマッチ
不妊患者を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」の今春の調査によると、不妊治療を受けた人の約7割が2回以上の転院をしたと回答。「各施設で治療方針や検査項目が違い、戸惑った」など不満の声が届いた。
費用に関するファインの別の調査では、回答者の4割が体外受精1回で「50万円以上」とした。現在の保険適用の対象は、原因の検査など治療の初期段階に限られ、人工授精、さらに高度な体外受精や顕微授精は保険適用外の自由診療で、全額自己負担。もともと治療費負担が重いことは知られているが、ファインは「転院の積み重ねが、さらなる高額化につながっている」と指摘する。
不妊治療専門の東京HARTクリニック(東京都渋谷区)に勤める小柳由利子医師は、患者と病院のミスマッチはあると指摘し、自由診療の弊害を原因に挙げる。ビジネス目的で参入して利益追求に走る病院もあり、施設ごとの治療成績の開示が進んでいない現状では、患者が不利益を受けるリスクが伴うと分析する。
小柳医師は、保険適用する上で「国が一定の治療成績以上という(適用の)基準をつくれば開示が進む」と期待。不妊原因は患者によってさまざまなため「幅広い治療の選択肢を残すためにも(保険診療と自由診療を組み合わせた)混合診療を認めてはどうか」と提案する。
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