9月1日、日本にデジタル庁が発足する。日本のデジタル化の遅れは深刻で、世界との格差が広がっている。新たな省庁の誕生で、「デジタル敗戦」ともいえる状況から脱却できるかに注目が集まる。世界に目を向けると、巨大IT企業が台頭するなど、経済環境は様変わりしている。第3部では、変わる社会の仕組みを探る。
東京・紀尾井町の複合施設に入居するデジタル庁のオフィスは、さながらIT企業のようだった。発足を間近に控え、フロアのあちこちでオンライン会議が行われ、Tシャツ姿で立ったままパソコンを開いて作業する職員もいた。人事担当の斉藤正樹さん(37)は「データ設計やアプリ開発のエンジニアら専門性の高い人材が集まった」と話す。
菅内閣の看板政策「行政のデジタル化」の一環として、デジタル庁は設置される。私たちの暮らしと最もかかわるのは、新たな庁が主導するマイナンバー関連の施策だ。
マイナンバーは全国民に12桁の番号を割り当てる制度で、2016年に運用が始まった。これまでは主に税、社会保障、災害の3分野で行政機関が活用してきたが、直近では10月から、ICチップを埋め込んだマイナンバーカードの健康保険証としての本格運用が始まる。
「保険証の情報を手入力するのに時間がかかっていたが、情報を一瞬で読み取れるようになった」。3月から先行導入している東京都足立区の「さなえ薬局」の薬剤師、豊田陽祐さん(51)はこう話す。端末でカードを読み取り、顔認証をすると、氏名や生年月日、保険証の番号などのデータがパソコンに取り込まれる。10月からは患者の処方薬の履歴を確認できる機能などが追加されるという。
22年度中にはカードの専用サイト「マイナポータル」に振込先の口座を登録すると、災害時などの国民向け給付が自動的に支給されるようになるほか、スマートフォンからの行政手続きが可能になる。24年度末にはカードと運転免許証との一体化も始まる予定だ。
日本にとって、この20年の歩みは「デジタル敗戦」と称される。
01年に森内閣は「e―Japan戦略」を打ち出し、行政サービスの電子化などを目指した。政府は03年、住民基本台帳ネットワークの稼働開始と同時に、個人情報が入った「住基カード」の交付を始めた。オンラインでの確定申告などで活用できる公的な身分証明書としての役割が期待されたが、15年末に発行を終えた。この時点での普及率は5・6%と低迷した。
行政手続きのデジタル化も遅々として進まなかった。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、国の行政手続きのオンライン利用率は19年時点で7・9%にとどまり、29か国中最下位だった。
からの記事と詳細 ( 「IT敗戦」脱却へ、保険証もマイナカードに[奔流デジタル]#変わる社会の仕組み<1> - 読売新聞 )
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