保険商品の収益は
どこから生まれるのか?
某大手生命保険会社が不祥事により売り上げを大きく減らしたが、逆に増益になったというニュースが近年話題になった。「売り上げを減らしても利益が増えるのは、保険料がもともと高過ぎるからだ。保険会社は、ぼろもうけしているはずだ」という臆測に基づくコメントが、SNSで数多く流れた。
製造業の場合は、売り上げが減れば、資産売却益などの特別利益でも得られない限り、その年の利益も減るのが一般的であろう。例えば、1商品100円で利益が30円のとき、1万個の売り上げが5000個に減れば、利益も30万円から15万円に落ち込むという、至極当たり前の発想だ。
もっとも、利益を大きく上乗せした新商品を発売すればこの限りではないが、他社との競争が厳しいビジネス環境では難しい。それでは、保険という商品の収益性がどこから生まれるのかを解説したい。
製造業と保険業の違い
掛け捨ての保険商品において、お客さまからいただく保険料は、(1)将来の保険金支払いに充てる「純保険料」と、(2)社員の給与、ビルの賃料など保険会社の運営に必要な経費や募集代理店に支払う手数料などに充てる「付加保険料」―から構成される。
製造業の場合、製品開発に要する原価があらかじめ分かっているのが原則であり、製品を販売した時点で販売価格と原価の差額から利益を認識しやすい。その結果、経営の状況は単年度の売り上げからある程度推測することができる。
一方、保険業の場合は、お客さまが保険に加入した時点では、保険の原価といえる将来の保険金支払額は確定していない。保険期間が満了するか、あるいは保険期間の満了後に十分な時間が経過し、最終的な保険金の支払いが終了してはじめて、原価が判明するという特殊なビジネスだ。
従って、単純にある年度の売り上げが多いからといって、収益も良好であるとはいえない。
例えば、新商品を大量に販売し、実績損害率が当初予定していた損害率を大幅に上回ったときは、後年になって大赤字が顕在化することになる。そのため、商品開発時には保守的な前提条件で保険料を計算し、保険料を構成する各数値に関しては定期的にモニタリングを行い、予定との乖離(かいり)状況を確認する作業が重要となる。
次ページ以降では、損害保険と生命保険に分けて、その特性に応じた保険商品の収益性について考察してみたい。
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