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①ヘルスケア事業の分社化
まず、ヘルスケア事業の分社化は、今後ヘルスケア事業単独での収益化を狙う「Well-being Driven型」の保険会社にとって有効と考えられます。ヘルスケア事業が本業に取って代わる、もしくはその業績を補完するまでマネタイズが成功するには、まだまだ多くの投資と時間を要します。こうした状況の中で、ヘルスケア事業が保険会社の“内側”に在り続けると、よほど思い切った資源配分・経営判断をしない限り「保険のオマケ」の域を出ることは難しいと言えます。
株式会社であれば株主、相互会社であれば契約者といったステークホルダーに対して、ヘルスケア事業への投資の位置づけ、今後のリターンなどの説明責任も生じます。こうした“制約”から離れてマネタイズを図るには、分社化が有力な選択肢となります。
②ニッチな顧客セグメントに向けたパーソナライズド化
次に、ニッチな顧客セグメントに向けたパーソナライズド化は、すでに「Improved Underwriting型」の保険会社において取り組みが進んでいます。さらなるニッチ化・パーソナライズド化を進めることは、特に特定の顧客セグメントを得意とする保険会社にとってはブランド戦略との相乗効果を含めて武器になり得るでしょう。
③ ヘルスケアを企業福利厚生の一部に組み込んだ職域のデジタルタッチポイント化
最後に、ヘルスケアを企業福利厚生の一部に組み込んだ職域のデジタルタッチポイント化について考えます。
既に「Health/Wellness Program提供型」の保険会社は、健康保険組合や企業の人事向けに、健康経営の支援や従業員の健康支援をサービスとして展開しています。一方、健保や企業人事からしても、従業員からしても、ヘルスケアというのは福利厚生メニューの一つであり、それ単体に大きな付加価値を感じ経済的資源を投じるのは、健康意識が高い、もしくは健康リスクを感じている一部の層に留まることが想定されます。保険会社、もしくは保険の営業職員に顧客が期待するのは、「今の健康状態、もしくは将来の健康リスクを踏まえたライフプランニング」であり、「そのライフプランニングを踏まえた最適な保障」ではないでしょうか。
特に、これまで保険会社が提供してきた企業の福利厚生としての団体保険(総合福祉団体保険、団体定期保険など)や団体年金(確定給付型企業年金、確定拠出型企業年金等など)については、従業員からしても積極的に加入している意識が薄く、これらを踏まえたライフプランニングや保障設計を受けられることには価値を感じる可能性が高いと言えます。
ライフプランニングは、顧客の健康状態はもちろんのこと、年収・家族形態・持ち家の状況など、プライベートな情報提供が必要になるうえ、「保険販売のために誘導されているのではないか」といったバイアスにも陥りやすいものです。しかし、企業の福利厚生サービスとして、従業員の健康状態や企業独自の福利厚生(保険・年金や健康保険の付加給付など)を踏まえたアドバイスであれば、受け入れられやすいと思われます。
こうしたHealth×Wealthは、企業が近年重視する従業員のWell-beingの概念ともつながりやすく、企業の従業員ポータルサイトなどのデジタル上で提供されれば、コロナ禍で失われた職域におけるタッチポイントとして導入が進む可能性があります。
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