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Tuesday, March 24, 2020

【支え合う 介護保険20年】 理念は実現したのか - 中日新聞

 「介護を社会全体で支えよう」と始まった介護保険は、4月で発足から20年。「家族の介護負担を減らす」「必要なサービスを自由に選べる」などの当初の理念は実現したのか。要介護者の多い75歳以上が急増する時代を迎え、制度はどうあるべきか。介護保険情報をインターネットなどで発信し続ける市民団体「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」主宰の小竹雅子さん(63)と、保険制度の設計にも携わった厚生労働省介護保険計画課長山口高志さん(46)に聞いた。(編集委員・五十住和樹)

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「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」主宰 小竹雅子さん(63)

予防重視 軽度者外し招く

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 −介護保険は介護の社会化を理念に始まった。

 介護より「介護問題」が社会化された。家庭で主に女性たちが担っていた課題が共有化され、孤立死や高齢者虐待も可視化。この二十年の成果は「お嫁さん」が介護から解放されたことだが、代わりに「実の娘」や配偶者の介護(老老介護)が増えた。家族の負担は多少軽減されたが、家族介護が前提で行われている。

 利用する本人が介護サービスの中身を決める権利があるとした点や、介護技術が向上し、認知症研究も進んだことは評価できる。

 −今年の法改正のテーマの筆頭は「健康寿命の延伸」。

 なぜ、介護保険で健康寿命を延ばさねばならないのか。二〇〇五年に制度を最初に見直した時、予防重視型への転換と言われた。介護が必要になったときにどんな支援が必要かを深めるのではなく、良くなろうという指向。病気や障害がある人への支援のはずが、病気や障害をなくそうと言っているのと同じ。介護保険は介護が必要になった人にサービスを提供するために保険料を集めているはず。

 −一四年改正で、「要支援1と2」の介護予防の訪問介護とデイサービスが保険給付から外れ、市町村の事業になった。

 認定の軽い人を給付から追い出そうという話。健康寿命の延伸を掲げ、要介護1と2の人まで訪問介護を取り上げようと仕組んでいる。介護予防や健康寿命の延伸は、軽度者外しに使われている。

 −国は高齢化による介護費用や保険料の上昇を抑えるためとしている。

 税の投入を増やせばいい。安い給付額で頑張っている在宅の人たちをたたくのでなく、費用が高い施設の在り方を考えるべきだ。利用料も当初は一割だったのが、所得の高い人は部分的に二割、三割に。ならば〇・五割とか〇・三割の人もあっていい。ケアマネジャーが今、一番苦労しているのは、理想的なケアプランを提示しても「そんなにお金が払えない」と訴える利用者や家族が多いことだ。

 おだけ・まさこ 1956年、北海道苫小牧市出身。81年から市民団体「障害児を普通学校へ・全国連絡会」で活動。2003年から介護保険に特化した「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」で、電話相談などをしている。

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厚労省介護保険計画課長 山口高志さん(46)

地域づくりにも主眼置く

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 −介護保険は国民の意識をどう変えたか。

 皆で支え合おうという理念は二十年で随分浸透した。介護の問題を家庭が抱え込まず、相談できる場所もできた。多くの民間が参入し、サービスの拡大にも役立った。

 −サービスの利用者は当初の三倍を超え、高齢者の平均保険料は二倍に。

 制度の持続を考えれば、必要なところに給付を重点化・効率化しなければ。介護資源の最適な配分という視点は追求し続ける。不断の見直しをしないと、制度がもたなくなる危機感はある。

 −生活援助をボランティアが行う仕組みも始まったが、資格のあるヘルパーら専門職による生活援助は自立した生活の維持に不可欠では。

 高齢者の生活ニーズは多様であり、専門職と地域住民の皆で支えていくことが大事。ただし、介護保険の一番の理念は自立支援と重度化防止で、その部分は守る必要がある。専門職による生活援助が重要というのはその通りだ。

 −利用料は全員が一割負担だったが所得による応能に。特別養護老人ホーム(特養)入所は要介護3以上の人にするなど給付も絞っている。

 高齢者の所得水準にはかなり差がある。制度の持続性からも、応能の負担をお願いせざるを得ない。特養は多くの待機者もいる中、要介護度の比較的高い人を優先した。

 −戦闘機を買うなら社会保障を厚くすべきだとの声も。

 介護保険は社会連帯の仕組みで、保険料による運営は根幹。公費の投入は抑制的であるべきで、今の50%が基本と考えている。

 −介護人材の不足は深刻。

 目下最大の課題。処遇改善や魅力発信、ロボットの活用など、手を尽くしていかなければ。介護職が満足できる賃金水準を確保し、保険料も上がりすぎないバランスを探る必要がある。

 −今回の法改正は「地域のつながり」が強調されている。

 介護保険は地域づくりにも主眼を置き始めた。元気な高齢者らも参加する支え合いを、支援するということだ。

 やまぐち・たかし 1973年、群馬県高崎市出身。96年に当時の厚生省に入省し、98年から「介護保険制度施行準備室」に所属して制度の仕組みづくりなどに携わった。2019年7月、介護保険事業の企画立案を行う現職に。

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March 24, 2020 at 04:50PM
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