定年間近で見えてくるもの――「定年再雇用」とはそもそも何か
今の日本の社会では、どの企業も60歳前に「定年」を設定することはできない法律になっている。しかも、少子高齢化が加速している現状では、人手不足を解消する必要があること、そして公的年金の支給開始年齢が原則65歳に引き上げられたことを踏まえると、国は60歳以上の高年齢者を労働市場に留める施策を講じざるを得ない。その一つが「定年再雇用」である。 「定年再雇用」とは、国が企業に対し、本人が希望するのであれば定年後も65歳まで雇用することを義務付けた制度である。2013年4月から施行されており、今や60歳から64歳までの高年齢者の80%以上が何らかの形で働いている。 他方、社会保障制度というマクロ的視点に立てば、年齢が上がれば上がるほど関連する給付費は増えるものであり、18年度の医療費は、60歳代前半では1人あたり年間平均で約37万円、60歳代後半では約46万円もかかっている。(ちなみに、20歳代は10万円弱、30歳代で13万円弱、40歳代で18万円弱、50歳代で30万円弱。)人口の3割が65歳以上である現状からすれば、「支える者」を増やさなければ、日本の社会保障制度が破綻してしまうことは明らかだ。 定年再雇用という仕組みは、60歳~64歳の世代を「支えられる世代」から「支える世代」に移行させる制度改革としては必要不可欠なものであった。そして「支える者」になるためには、高年齢者自身、定年前と同じように、健康保険や厚生年金保険といった公的保険制度に加入をし、社会保険料を拠出しなければならないのは当然のことである(上記統計結果は、厚生労働省「令和3年版高齢社会白書」より)。
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