2019年の利用者は487万人、同年度の総費用は予算ベースで11兆7千億円に上る。25年には団塊の世代の全員が75歳以上となり、以降も介護需要の増加が見込まれている。
将来にわたって制度を維持していくには、財源や介護人材の新たな確保策が不可欠だ。思い切った改革が避けて通れない。
財源は、40歳以上が支払う保険料と、国と地方の公費、利用者の自己負担で賄う。利用者が増えると保険料にのしかかる仕組みになっている。
市区町村や広域連合ごとに決める65歳以上の保険料は現在、全国平均で月額5869円だ。制度開始時の2倍を超えた。
当初は原則1割だった自己負担も、一定の収入がある人は2割、このうち現役並みに所得が高い人は3割と引き上げられた。
一方で、介護の必要度合いが軽い「要支援1、2」の訪問介護や通所介護は保険から外し市町村の事業に移す、といったサービス縮小も進む。
年金生活の高齢者にとって、負担は限界に近づいている。負担増とサービス縮小を繰り返すだけでは、制度の存続は困難だ。
専門家からは、保険料支払いの開始年齢を20歳に引き下げ、障害者福祉と統合し国民全体で支える仕組みに変える案が出ている。
介護現場の人材不足も深刻だ。訪問介護のヘルパーは若手が集まらず、利用者の受け入れを制限する施設もある。人材を確保できずに倒産する事業所も相次ぐ。
背景の一つに賃金の低さがある。介護職員の給与は全産業平均に比べて月額9万円程度低い。
国は介護報酬改定などで賃金を引き上げてきたが、まだ不十分だ。一層の改善を図らなければ、人材は呼び込めない。
地方自治体の中には、高齢者が介護ボランティアをすると保険料の負担を軽減する独自の取り組みも現れている。
国は昨年末、3年に1度行う制度見直しの議論で、財源や人材の確保といった存続の根本にかかわる課題を先送りした。
介護保険制度は、安心して老後が過ごせる地域づくりの根幹でもある。存続に向けて、国は地方や現場の声を聞き、しっかりと向き合うべきだ。
(3月31日)
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March 31, 2020 at 07:39AM
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社説 介護保険20年 制度の存続に向き合え - 信濃毎日新聞
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