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Monday, May 31, 2021

“テレワーク手当”の新設で生じる、社会保険の手続き「随時改定」とは? - ITmedia

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画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 毎月の給与から、健康保険料や厚生年金保険料の自己負担分が控除されています。その額は従業員の平均給与額に保険料率をかけた額の半分で、その計算の基礎となる平均給与額は標準報酬月額と呼ばれています。

 本記事では、標準報酬月額がどのように決まるかについて説明したのち、テレワーク手当の新設など、年度の途中で給与額に一定以上の変動があった際に行う必要がある社会保険の手続き「随時改定」について、解説します。

1.社会保険料の計算方法

 標準報酬月額の決め方の一つに、毎年4〜6月に実際に支払った給与額の平均額をもとにする方法があり、定時決定と呼ばれています。その平均額を下図に示す標準報酬月額表(厚生年金保険用)に当てはめて決めます。

 例えば、3カ月間の平均額が29万円以上31万円未満の場合、標準報酬月額は30万円になります。この表には1等級から32等級が設定されています。

図表1:令和3年度版の標準報酬月額表

 このようにして決まった標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月まで原則として固定され、毎月の社会保険料の計算の基礎になります。

2.標準報酬月額の対象となる給与

 実際に支払われた給与の基本給や諸手当そして残業手当などが、標準報酬月額を計算する対象となります。その中には基本給のように、ほぼ毎月変わらずに支給されるものがあり、固定的給与といわれます。一方、残業手当や休日出勤手当のように、その月によって変動するものもあり、変動的給与といわれます。

 この他に給与明細に記載されるものとして通勤手当があります。代表的な支給方法は、交通機関の定期代などを毎月定額で支給するものです。この手当は、労働の対価ではありませんが、標準報酬月額を計算する際は固定的給与として扱われます。

 なお、テレワークを一部導入していて、出社した際の交通費のみ実費精算とする場合、標準報酬月額に含まれるかどうかについては前回記事にて解説しました。

3.途中で給与額に変動があった時の随時改定とは

 社会保険料の負担原則に、「その人の給与額に見合った保険料とする」という考え方があります。定時決定で決まった標準報酬月額は原則として1年間固定されますが、期の途中で給与額に大きな変動があったときは、対応が必要です。

 そこで給与の大きな変動があって一定の要件を満たす場合、次の定時決定を待つことなく標準報酬月額の変更をします。これを随時改定、または月額変更届といいます。随時改定の条件は次の通りです。

  • 昇降給や手当の改変などにより、固定的賃金に変動があった
  • 変動した月から3カ月間に支給された平均給与に相当する標準報酬月額の等級が、従前の標準報酬月額の等級に比べて2等級以上の差が生じた。なお、支給された給与には、残業手当や休日出勤手当などの変動的給与も含まれる
  • 3カ月とも支払い日数が17日以上ある

4.テレワークによる手当の変動

4-1.通勤手当の変動払方式への変更

 テレワーク導入によって月の所定出勤日のうち一部を在宅勤務とする例が増えています。この出勤方法にすると、実際の出社日数に応じた通勤費が定期代よりも安くなるケースが発生し、従来の固定払から出社日数に応じた変動払に変更する会社が増えています。その結果、通勤手当は固定的給与から変動的給与になりますので変動が生じます。

4-2.在宅勤務手当の新設

 また、在宅勤務中にPCを使用することにより、通信費や電気代などが発生しますが、その一部を会社が在宅勤務手当として支給するケースがあります。金額は3000円から5000円が多いようです。

 支払方法には、実際に生じた電気代や通信費を実費弁済するものと、その金額にかかわらず定額で支払うものがあります。定額の場合は給与として扱われ、手当を新設した場合は固定的給与の変動にとなります。

4-3.随時改定の手続き

 上述した通勤手当の固定払いから変動払いへの変更や、定額の在宅勤務手当の新設は、標準報酬月額の随時改定の要件の一つである「固定的給与」の変動に該当します。従って、残業代などの変動的給与を含めて、変更月以降の3カ月間の平均給与相当の標準報酬月額が従前と比べて2等級以上の差が生じていると、随時改定の手続きをしなければなりません。

5.随時改定の対象になる? パターン別解説

 随時改定の対象となるパターンはいくつかありますので、図表を用いて説明します。

(1)固定的給与は変わらず、変動的給与が変わった場合(図表2-1)

 基本給や定額の諸手当はそのままだが、3カ月間の残業代の大きな変動があり、標準報酬月額表の2等級以上の差が生じた場合、固定的賃金に変化がないので随時改定の対象になりません。

(2)手当新設で固定的賃金が変動し、変動賃金も増減した場合(図表2-2)

 新たに定額の在宅勤務手当が支給され、残業代を含めた3カ月間の平均給与に相当する標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合、随時改定の対象となります。

 なお固定的給与のみで増減で判断するのではなく、残業代等の変動的給与を含めて等級差を判断することに注意をしてください。以下、同様です。

(3)通勤手当の実費支払化で固定的賃金が変動し、変動賃金も増減した場合(図表2-3)

 今まで定額で支給していた通勤手当を出社した日数に応じた支払方法に変更することは、固定的給与から変動的給与への変更となります。これに残業代等の変動的給与を加算した3カ月間の平均給与額相当の標準報酬月額の等級の変化を見ます。

 なお図表は、改定後が減額した例ですが、増額の場合も該当します。

(4)手当の変動化と新設で固定的賃金が変動し、変動賃金も増減した場合(図表2-4)

 定額払いの通勤手当を出社日数に応じた手当に変更すると同時に、在宅勤務手当を新設するケースです。

 テレワーク導入により、この二つの手当の改定を同時に行った例は多いといわれています。これは固定的給与の変動に該当しますので、要件に該当すれば随時改定の対象となります。

著者紹介:佐藤純 青山人事コンサルティング株式会社 代表取締役

慶応義塾大学経済学部卒、経営管理研究科(MBA)履修。メーカー勤務後、青山人事コンサルティング株式会社を設立。日本生産性本部、労務行政研究所、商工会議所、法人会等で人事セミナーの講師を数多く務める。日本経済新聞のコラムを7年にわたって連載執筆、日経ビジネス・日経マネー誌などに寄稿。業種や企業規模を問わず多数の人事顧問に就任。

主な著書に『コンピテンシー評価モデル集』『65歳継続雇用時代の賃金制度改革と賃金カーブの修正方法』『同一労働同 一賃金の基本給の設計例と諸手当への対応』(以上、日本生産性本部)『雇用形態別・人事管理アドバイス』『雇用形態別・人事労務の手続と書式・文例』(編集責任者 新日本法令)など。

青山人事コンサルティングの公式サイトはこちら

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