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Monday, July 18, 2022

(社説)節税保険処分 いたちごっこ終止符を:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

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 中小企業経営者向けの「節税保険」で、初めての行政処分が出た。これまでも保険業界が、所得税法人税を軽くできる効果をうたう新商品を相次いで投入してきた分野だ。今回の処分を機にゆがんだ販売に終止符を打ち、保険本来の役割に立ち返らなければならない。

 外資系中堅のマニュライフ生命保険が金融庁業務改善命令を受けた。「名義変更プラン」と呼ばれる商品の開発や販売を組織的に推進したという。

 企業名で経営者に死亡保険をかけて高額の保険料を払い込んだ上で、解約返戻金が少ない期間中に経営者個人名義に変え、返戻金額が高まってから解約させる仕組みだ。企業と経営者双方の節税になると強調して売り込んでいたとされる。

 当局の課税ルール見直しで、実際に節税効果を得た契約者は限られたが、金融庁は、手法自体が「保険本来の趣旨を逸脱し」ていると指摘し、重大で悪質性が高いと断じた。マニュライフの前最高経営責任者らが主導し、取締役会の資料にも明記されていたという。

 規制強化で他社が手を引いた後も、節税効果を売りに勧誘を続けていたことが、社内調査で判明している。経営責任の明確化や内部管理体制の立て直しに加え、企業統治の強化や組織風土の改革を急ぐ必要がある。

 「節税保険」は過去にもブームになった。大手も含めた生保各社がこぞって販売し、2018年には8千億円規模まで市場が拡大したという。当局が課税ルールを見直すと「抜け穴」を突く商品が新たに開発されて人気になる、といった「いたちごっこ」が続いてきた。

 企業が顧客の需要を見極め、商品を工夫するのは当然だ。だが、保険業は法律で公共性がうたわれた免許事業である。顧客に租税回避を勧めるような業務のあり方は許されない。

 マニュライフも加わる生命保険協会は、生命保険が「『助け合い』『相互扶助』の仕組みによって成り立っている」と説明している。契約者が保険料を負担し合って万一に備えるという基本的役割を、改めて銘記すべきだ。不正の結果として厳しい規制が細部まで及べば、本来の目的に資する商品開発の自由度にも影響しかねない。

 行政の「縦割り」にも課題があった。従来、金融庁が認可した保険が「節税保険」としてヒットした後で、問題視した国税庁が課税ルールの見直しに踏み切る事例が続いていた。

 金融庁は今回、商品認可の審査段階から国税庁の税務上の見解を活用する方針を示した。透明性のある適切な対応ができるよう、連携を図ってほしい。

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